指が曲がらない・力が入らない原因は?指の屈筋腱損傷の治療とリハビリ

指の屈筋腱損傷(FDS/FDP)を徹底解説|原因・症状・診断・手術・リハビリ・予防【所沢】
指が曲がらない・痛いのはなぜ?指の屈筋腱損傷の原因と治療法
日常の家事や仕事、スポーツ中にも起こり得る「指の屈筋腱損傷」を、現場でそのまま使える知識に整理してお届けします。
「指が曲がらない」「朝こわばる」「握力が落ちた」「小さな切り傷のあとから指が動きにくい」——心当たりのある方は、早めの受診が機能回復の分岐点になります。
1. 屈筋腱損傷とは?

- 腱は「筋肉と骨をつなぐロープ」。指を曲げる腱を屈筋腱と呼び、
- 浅指屈筋(FDS):主にPIP関節(第2関節)を曲げる
- 深指屈筋(FDP):主にDIP関節(第1関節)を曲げる
- 母指には長母指屈筋(FPL)が1本。
- 腱は腱鞘とプーリー(A1〜A5等)という“トンネル”を滑って動くため、ほんの小さな切創でも深層で腱が断裂していることがあります。
- 外傷(刃物、ガラス、ドア挟み)やスポーツ外傷(衣服をつかんだ瞬間にFDPが切れるジャージーフィンガー)で生じ、放置すると癒着や再断裂、可動域制限につながります。
💡 皮膚の傷が浅くても、「思い通りに曲げられない」=腱損傷を疑うサインです。
2. 原因(なぜ起こる?)
- 切り傷
→ 包丁・ガラス・金属板など。浅い表皮創でも深部で腱や神経が断裂している例は珍しくありません。 - 指や手を強くつぶしたり、皮膚が裂けてできるケガ
→ ドアに挟む、ローラーや機械で強打。皮膚は保たれているのに腱が切れることも。 - スポーツ外傷
→ ラグビー・バスケ・サッカーで相手の衣服をつかんだ直後にDIPが曲がらなくなるジャージーフィンガー(FDP断裂)。クライミング等では部分断裂→癒着へ。 - 長期間にわたる使いすぎ(繰り返しの負担)
→ 反復作業・楽器・タイピング過多などで腱鞘炎→微小損傷→滑走不良。 - 過去の病気やケガ(既往)や、手術を受けたあとの状態
→ 以前の腱鞘炎手術や瘢痕で滑走性が落ち、小外力でも再損傷しやすい。
3. 症状
- 第1関節だけが曲がらない → FDP断裂を強く疑う
- 第2関節だけが曲がらない → FDS断裂の疑い
- こわばり/引っ掛かり感/左右差のある握力低下/腫れ・痛み/皮下出血
- “創が小さいのに機能障害が大きい”のは深層損傷の典型
自分でできる簡易セルフチェック
- FDPテスト:第2関節を反対の手で固定し、第1関節だけを自力で曲げられるか。
- FDSテスト:隣の指を伸ばしたままで固定し、対象の指の第2関節だけ曲げられるか。
どちらかが明らかにできなければ屈筋腱損傷を強く疑うので、自己判断せず受診してください。

4. 診断
傷の部位と深さ、可動域(ROM)、筋力、神経血管評価(しびれ・冷感・爪床再充満)。
プーリー部圧痛や腱の浮き上がりの消失を確認
- レントゲン:骨付着部剥離(ジャージーフィンガーの骨片)や異物の確認。
- 超音波(エコー):外来ベッドサイドで腱連続性・断端位置・滑走を動的に評価でき、初期診療で非常に有用。
- MRI:部分断裂・瘢痕・癒着の詳細把握、慢性例の評価に役立つ。
💡「指が曲がらない+創(あるいは強打)」は、まず腱断裂を除外してから次を考える、が安全です。
5. 治療
保存療法(軽症の場合)
- 指を安静に保つ
- 包帯・固定・サポーターで保護
- 氷で冷やして炎症を抑える(タオル越しに行い低温やけどに注意)
- 痛み止め・抗炎症薬の内服
- 超音波・電気治療などの物理療法
手術療法(腱が切れている場合)
- 腱縫合術:受傷直後〜数日以内が特に有効
- 腱移植術:受傷から長期間経過し、腱が太く縮こまり縫合できない場合に実施
※腱は受傷から数週間すると腫れて太くなり、縫合が難しくなってしまいます。
「指が曲がらない」症状がある場合は、早めの受診がとても重要です。
代表的合併症
- 癒着(他の組織とくっ付く):ROM低下。適切な早期運動で予防、遷延時は腱剥離(tenolysis)。
- 再断裂:過大負荷/転倒/不適切なホームエクササイズ。再縫合や再建で対応。
- プーリー損傷:特にA2/A4は重要。過剰切除は弓なり変形→握力低下を招く。
- 神経血管損傷併存:同時修復または二期的対応。
6. 術後リハビリ
屈筋腱治療の成功=手術+リハの二人三脚。プロトコルの選択は縫合強度・損傷部位・合併損傷で個別化します。
リハビリはおよそ3ヶ月ほどかかります。その際には慎重な管理が必要となります。
① 0〜1週:保護と腫脹管理
- 背側ブロッキングスプリント常時装着(手関節軽度屈曲、MP屈曲位)。
- Duran法:受動屈曲+能動伸展補助を低負荷・高頻度で。
- Kleinert法:輪ゴム牽引で受動屈曲→能動伸展。
- 挙上・圧迫・ポンピングで浮腫コントロール。
② 2〜4週:滑走の最適化
- 早期能動屈曲の慎重導入(近年の強固縫合で推奨される場面が増加)。
- 差動滑走(FDS/FDPを意識した個別運動)、瘢痕モビライゼーション。
- 痛み0〜2/10の範囲で回数を稼ぐ=質×頻度。
③ 5〜6週:ROM拡大と軽作業復帰
- スプリント段階的減量(医師指示に従う)。
- 巧緻性訓練(ボタン、硬貨、箸)、軽いクリープ負荷。
④ 7〜12週:抵抗運動と職業/競技復帰準備
- セラプットや軽負荷ゴムで抵抗運動開始。
- 握力・ピンチ力の左右比85〜90%を目標。
- 作業・競技に合わせたタスク特異的トレーニング。
禁忌
痛みゼロを待って「動かさない」は癒着の温床。逆に焦っての過負荷は再断裂。
合言葉は「低痛・高頻度・正確なフォーム」です。
7. 予防

- 刃物・ガラス作業は防刃手袋/保護具。
- ウォームアップ+前腕・指ストレッチを習慣化。
- クライミング/ラケット競技は段階的負荷増加とテーピング。
- 反復作業はグリップの見直し・定期休憩・交代でオーバーユース回避。
- 既往がある指は寒冷時の過負荷を避け、保温+軽運動で滑走性維持。
8. よくある質問(Q&A)

傷は小さいのにDIPが曲がりません。様子見で治りますか?



FDP断裂が疑われます。早期手術の適応になりやすいため即受診を。



いつまでに手術が理想?



可能なら2週間以内。遅れると断端退縮・瘢痕化で再建が難しくなります。



仕事やスポーツ復帰の目安は?



軽作業は4〜6週、重作業/競技は8〜12週以降が一般的目安(個別に調整)。



リハはどれくらい必要?



目安は8〜12週、職業・競技次第で延長。OT/理学療法士の指導下で継続を。



注射やお薬だけで治りますか?



完全断裂は保存的治療では機能回復が困難です。画像+機能評価で方針決定します。
まとめ
屈筋腱損傷は、「早期診断」×「適切な修復」×「プロトコル順守の早期運動」が回復の鍵。
創が小さくても深層で腱が切れていることは珍しくありません。機能の評価を最優先に、手外科とリハのチームで滑走を守り、再断裂を避け、日常への最短復帰を目指しましょう。
参考:一般社団法人 日本手外科学会「手外科シリーズ12 屈筋腱損傷」ほか臨床ガイドライン
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当院は超音波によるベッドサイド評価、一次縫合後の手の専門リハビリまで一貫して対応しております。
「指が曲がらない・力が入らない」と感じたら、自己判断せずお早めにご相談ください。
