指を切断したときの治療法|再接着手術と回復までの流れ

切断指(指の再接着)を最短で理解する|応急処置・手術・リハビリ・予防・復職の実務ガイド

「指が切れた」という事態は、誰にとっても想像したくない緊急事態です。しかし、現実には家庭内(包丁・ガラス)職場(機械・プレス・ノコ刃)交通事故など、日常のあらゆる場面で起こり得ます。

本記事では、現場で何をすべきか/してはいけないかから、再接着手術(マイクロサージャリー)の流れ、術後24時間のリスク管理ハンドセラピー(リハビリ)合併症対策職場復帰計画まで、実用的にまとめました。


目次

1. 切断指とは?

切断指は、外傷で指の一部または全部が身体から切り離された状態を言います。

完全切断

皮膚・軟部組織・骨・腱・血管・神経が完全に分離。

不全切断

一部の組織でかろうじて連続性が保たれる。

機序

鋭利切断(包丁・刃物)/挫滅(ローラー・ドア)/牽引(指が引き抜かれる)/熱損傷(高温・電撃)など。

目的は可能な限り機能と外観を回復させ、日常生活・仕事への復帰を実現することです。


2. 現場での応急処置

2-1 やるべきこと

  1. 出血を圧迫止血
    • 清潔なガーゼやタオルで直接圧迫
    • 大量出血では弾性包帯で圧迫固定。
  2. 切断片の冷却保存
    • 切断指を清潔なガーゼ or サランラップで包む
    • 密閉袋(ビニール)に入れる
    • その袋を氷水の入った別袋に入れて間接的に冷却(直氷・直水は不可)
      • 凍結は厳禁(凍傷で組織が壊死する)
  3. 早期搬送
    • 可能なら手外科対応施設へ。
    • 救急要請/自家搬送でも切断片を一緒に
  4. 怪我した時の情報の整理
    • 機械名、汚染状況、受傷時刻、基礎疾患、破傷風ワクチン歴など。

2-2 やってはいけないこと

  • 切断片を洗剤・消毒薬に浸す
    • 組織を痛めるからNG。
  • 直接氷に触れさせる/冷凍庫に入れる
    • 不衛生になるからNG。
  • 無理な還納(くっつけようとする)
    • 組織の形が崩れるからNG。
  • 強く揉む・こする
    • 追加で組織が壊れるからNG。
  • 喫煙
    • 末梢血管が収縮し再接着成功率が下がるからNG。

こう覚えてね。

・圧迫

・包む

・密閉

・間接冷却

・急ぐ


3. 病院での初期評価と検査

全身評価(ABC

まず、傷口の状態を順番に確認します。そのうえで、出血をしっかり止め、痛みをできるだけ和らげる対応を行います。

局所

切れた部分の汚れやつぶれ具合、欠けている部分がないか、骨が見えていないかを確認します。あわせて、指の中のスジや血の通り、感覚の神経がどの程度傷ついているかを調べます。指が完全に取れていない場合は、血の流れが保たれているかも重要なポイントです。

画像

レントゲン検査で骨折や関節の損傷、体内に異物が残っていないかを確認します。必要に応じて、超音波検査で血の流れや内出血の有無を調べ、より詳しい評価が必要な場合にはCT検査を行います。

感染予防

破傷風を防ぐために予防接種を行い、傷の状態によっては感染を防ぐための薬を使うこともあります。

説明と同意

指の再接着は、ケガの状態や時間によってできる場合と難しい場合があります。再接着ができないときでも、指を使いやすくするための別の治療法がありますので、専門医と相談しながら最適な方法を選ぶことが大切です。


4. 再接着(マイクロサージャリー)の適応と限界

適応しやすい例

  • 刃物などできれいに切れていて、傷の汚れが少なく、取れてしまった指を適切に冷やして運ばれている場合は、再接着ができる可能性が高くなります。特に、複数の指や親指、指先など生活で重要な部分のケガや、回復力の高い子どもの場合は、再接着が積極的に検討されます。
  • 指は筋肉が少ないため、一般的には冷やして保存していれば、血が通わない状態が比較的長く続いても耐えやすいとされています。ただし、時間が短いほど再接着の成功率は高くなるため、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。

困難になりやすい例

  • 指が強くつぶれていたり、粉々になるような大きなダメージがある場合や、引きちぎられたようなケガ、やけどを伴う損傷では、再接着が難しくなります。また、取れてしまった指を長時間冷やさずにいた場合も、成功の可能性は低くなります。さらに、全身の体調が良くない場合や、強い喫煙習慣がある方、血管の病気が進んでいる場合も、血の流れが保たれにくく、再接着が困難になることがあります。
  • 仕事の内容や利き手かどうか、年齢、そしてどの程度の動きや感覚を取り戻したいかといった点を総合的に考え、ひとりひとりの状況に合わせて治療方針を判断します。

5. 手術の流れ

STEP
洗浄・デブリドマン

傷口をよく洗い、汚れや傷んでしまった組織を丁寧に取り除きます。

STEP
骨固定

細い金属のピンや小さなネジを使って、指の長さや向きがずれないように骨を正しい位置で固定します。

STEP
腱修復

指を動かすためのスジをつなぎ直します。指がなめらかに動くよう意識しながら、しっかりと縫い合わせます。

STEP
血管吻合

血の流れを回復させるため、顕微鏡を使って細い血管をつなぎます。血管が足りない場合は、別の場所から血管を移して補うこともあります。

STEP
神経縫合

感覚を戻すために、切れた神経も縫い合わせます。神経が足りない場合には、別の神経を使って補います。

STEP
皮膚閉鎖/皮弁

皮膚はできるだけ無理のかからない状態で閉じ、足りない場合には周囲や別の部位の皮膚を使って覆います。

STEP
固定

ギプスや添え木で指を固定し、腫れを防ぐために手を高く保ち、冷えないように注意します。

術後24時間が最も血栓リスク高。連続モニタリングと早期再探査が成否を分けます。


6. 術後管理

  • 血流監視
    • 指の色(白っぽい、紫がかる、暗い赤色など)や触ったときの温かさを確認します。あわせて、指先を押して離したときに色がすぐ戻るかどうか、出血の出方が自然かどうかを見ます。さらに、必要に応じて機械を使い、血の流れがきちんと通っているかを調べます。
  • 体位
    • けがをした手は心臓より高い位置に保ち、指や手首を強く曲げすぎたり、締めつけたりしないように注意します。
  • 保温
    • 体や患部が冷えすぎないように注意し、血管が縮んで血の流れが悪くならないようにします。
  • 薬物療法
    • 血のかたまりができにくくするため、施設の方針に応じて血を固まりにくくする薬を使うことがあります。あわせて痛みを抑える対応を行い、感染を防ぐために抗菌薬を使用します。
  • 禁煙厳守
    • 指先までの血の流れを守るために、最も大切な行動です。
  • 栄養・水分
    • 傷をしっかり治すための土台として、たんぱく質や体に必要な栄養素(ミネラルなど)を十分にとることが大切です。

7. 合併症と対応

  • 血管血栓・うっ血
    • 指の色が変わったり、触ったときに冷たくなってきた場合は、血の流れが悪くなっているサインです。その際は、すぐに再度の手術を検討し、血管をつなぎ直したり、血のかたまりを取り除く対応を行います。
  • 感染
    • 指が強くつぶれていたり、傷口が汚れている場合は、感染などのリスクが高くなります。そのため、傷んだ組織や汚れをしっかり取り除き、状態に合わせて感染を防ぐ薬の使い方を見直します。
  • 骨癒合不全・変形
    • しっかり固定して無理な力がかからないようにし、必要に応じて、時期を分けて骨を補う治療を行うことがあります。
  • 腱癒着
    • できるだけ早い段階から適切な手のリハビリを行うことで、動きが悪くなるのを防ぎます。それでも指の動きが長く改善しない場合には、くっついてしまったスジをはがす手術を検討することがあります。
  • 神経痛・しびれ・異常知覚
    • 感覚に慣らすためのリハビリを行い、必要に応じて痛みを和らげる注射や薬による治療を組み合わせます。
  • 冷感・血行不良
    • 手や指を冷やさないように工夫し、必要に応じて温めながら、血の流れを良くするためのリハビリを行います。

8. リハビリ(マニュアルセラピー)の実際

目的

血流の維持、腫脹コントロール、創治癒と瘢痕管理、関節拘縮予防、巧緻性回復、復職支援。

フェーズ別の目安

STEP
0〜2週

ギプスや添え木で固定した状態でも、手を高く保ち、むくみを防ぐために軽い動かし運動を行います。

あわせて、けがをしていない指や肩・肘など近くの関節を動かし、体全体が硬くならないようにします。

傷の状態を丁寧に管理し、回復が進んだ段階で傷あとをやわらかくするマッサージを始める準備をします。

STEP
2〜4週

医師の許可を得たうえで、まずは人に動かしてもらう運動から始め、徐々に自分でも少しずつ動かす運動へ移行します。

腫れや痛みがほとんど出ない、軽い違和感程度(痛みが10段階で0〜2くらい)の範囲で、回数を分けてこまめに行います。

STEP
5〜8週

運動は自分で動かすことを中心に進め、スジがなめらかに動くよう意識します。

あわせて、指先でつまむ細かな動きの練習や、仕事や日常生活に近い動作のトレーニングを少しずつ始めます。

STEP
9〜12週

少しずつ負荷をかける運動を取り入れ、握る力やつまむ力を高めていきます。

左右の手で比べたときに、握力やピンチ力が85〜90%程度まで回復することを、仕事復帰の目安とします。

STEP
以降

必要に応じて、指先の細かな動きや感覚を取り戻すためのリハビリを行います。

たとえば、さまざまな素材を触って違いを感じ取る練習や、鏡を使ったトレーニング、触覚への刺激を利用した練習などを取り入れます。

また、仕事の内容に合わせた動作練習を行い、段階的に職場復帰を目指します。

原則“低痛・高頻度・正確なフォーム”。焦りは再損傷、怠慢は癒着の温床。セラピストと二人三脚で。


9. 仕事・スポーツ復帰の考え方

  • デスクワーク
    • 創安定+軽作業から2〜4週で段階復帰が目安。
  • 手作業・重量物
    • 8〜12週以降に状況を見て。保護具・作業手順の見直しをセットで。
  • スポーツ
    • 競技特性に合わせ段階負荷。衝撃・把持力・振動の要素をスクリーニング。

10. よくある質問(FAQ)

切断片は水道水で洗っていい?

砂や汚れが酷い時に軽く流水で流す程度は可。ただしゴシゴシこすらない/消毒液に浸さないこと。直後は包む→密閉→間接冷却が最優先。

直接氷に当てると早く冷えるのでは?

凍傷で組織が不可逆に破壊されます。必ず袋→氷水の別袋という二重構造で対処します。

何時間以内なら助かる?

短いほど有利です。指は筋肉量が少なく冷却で比較的長く耐える傾向はありますが、条件で大きく変動します。迷わず即搬送が最善です。

すべての指が再接着できる?

いいえ。挫滅・熱・牽引の高度損傷、長時間未冷却などでは適応外になることがあります。代替として断端形成・皮弁再建・義手指などを検討します。

術後に一番気をつけることは?

血流のサイン(色・温度・痛みの変化)と禁煙、そして指示どおりの体位・保温です。


11. 予防(一次予防と再発予防)

  • 職場:ガード・非常停止・二重起動防止、作業標準化と安全教育、定期点検。
  • 家庭:刃物は刃先カバー・マグネットラック、ガラスは飛散防止フィルム
  • 行動焦らない・片手作業を避ける・視線を外さない。疲労時・夜間の危険作業は控える。
  • 再受傷予防:復職前に作業手順・工具グリップ・保護具を見直し、段階復帰を徹底。

12. まとめ

切断指は時間との闘いです。

圧迫止血→包む→密閉→間接冷却→早期搬送の一連動作で、再接着の可能性は大きく変わります。

手術はゴールではなくスタート術後24時間の血流管理適切なハンドセラピー生活と職場の再設計が、あなたの機能回復と再発予防を後押しします。迷ったら、すぐ相談をしましょう。


13. 所沢市周辺でのご相談

おやま整形外科クリニック所沢院
〒359-0037 埼玉県所沢市くすのき台1-12-10 第3西村ビル1階
TEL:04-2995-3863(受付 8:45–12:00 / 14:45–18:00)
診療:9:00–12:30 / 15:00–18:30

手外科・リハビリテーション科

受傷直後の応急評価、術後のマニュアルセラピー復職支援まで一貫してサポートします。当院にて予約状況をご相談ください。

予約はこちら → https://tokorozawa-seikei.reserve.ne.jp/sp/index.php?


参考資料

  • 日本手外科学会「手外科シリーズ14 切断指再接着」
  • 日本整形外科学会「切断された指の再接着」
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